「また審査に落ちた…。」
「うちの会社に問題はないはずなのに、なぜファクタリングを利用できないんだ。」

売掛先の信用力が原因で、あと一歩のところで資金調達を諦めざるを得ない。
そんな経営者様の悲痛な叫びを、私はかつて審査担当者として、嫌というほど耳にしてきました。

しかし、ここで諦めてしまうのは、あまりにも早すぎます。

こんにちは。
中小企業専門ファイナンシャルライターの白石美咲と申します。

かつて国内のファクタリング会社で審査部門のマネージャーとして、数千件以上の審査に携わってきました。

結論から申し上げます。
たとえ売掛先の信用力が低くても、ファクタリングの利用を諦める必要は全くありません。

多くの経営者様がご存じないだけで、審査担当者の視点を逆手に取った「審査を通すための裏ワザ」は、確かに存在するのです。

この記事は、単なるファクタリングの解説書ではありません。
私が現場で培った知識と経験を基に、売掛先の信用力という高い壁を乗り越え、貴社が今まさに必要としている資金を確保するための、極めて実践的な戦略をお伝えするものです。

もう、「売掛先のせいだ」と頭を抱えるのは終わりにしましょう。
この記事を読み終える頃には、あなたの手元に、希望の光となる具体的な次の一手が握られているはずです。

なぜ審査で「売掛先の信用力」がすべてなのか?元担当者が明かす舞台裏

まず最初に、なぜファクタリングの審査では、自社の経営状況よりも「売掛先の信用力」がこれほどまでに重視されるのか、その根本的な理由を知っておく必要があります。

この仕組みを理解することが、あらゆる対策の第一歩となるからです。

ファクタリングは「債権の価値」で判断される

銀行融資は、あなたの会社そのものの将来性や返済能力を審査し、「お金を貸す」という行為です。

一方でファクタリングは、あなたの会社が保有する「売掛債権(請求書)」をファクタリング会社が「買い取る」という、全く異なる金融取引です。

審査担当者は、あなたの会社ではなく、その売掛債権そのものに値段をつけている、というイメージを持ってください。

私たちが最も恐れるのは、買い取った売掛債権が、期日通りに支払われず回収不能に陥ること、つまり「貸し倒れ」です。
そのため、審査の最大の焦点は「この売掛先は、本当に期日通りにお金を支払ってくれるのか?」という一点に尽きます。

だからこそ、申込者であるあなたの会社の信用情報よりも、売掛先の支払い能力、すなわち信用力が絶対的な評価基準となるのです。

要注意!審査担当が「信用力低い」と判断する売掛先の具体例

では、具体的にどのような売掛先が「信用力が低い」と判断されてしまうのでしょうか。
私が審査担当者として特に慎重に評価していたのは、以下のようなケースです。

  • 新規設立の法人や個人事業主
    • 帝国データバンクなどの企業情報データベースに情報が乏しく、過去の支払い実績も確認できないため、客観的な評価が困難なためです。
  • 赤字決算や税金滞納が確認された企業
    • 資金繰りが悪化している明確なシグナルであり、売掛金の支払い遅延や未払いのリスクが極めて高いと判断します。
  • 過去の取引実績が乏しい、または初めての取引先
    • その取引が本当に実在するのか、継続的なものなのかを慎重に見極める必要があります。偽装された債権のリスクも考慮するため、審査のハードルは自然と上がります。

これらの売掛先からの債権は、私たちファクタリング会社にとって、回収リスクが高い「価値の不安定な商品」に見えてしまうのです。

【本邦初公開】売掛先の信用力不足をカバーする5つの裏ワザ

お待たせいたしました。
ここからが本題です。

売掛先の信用力が低いという不利な状況を、いかにして乗り越えるか。
私が審査担当者として見てきた、「この手があったか」と思わず唸った経営者様たちの、賢い立ち回り方をご紹介します。

1. 裏ワザ1:合わせ技で勝負!「優良債権」とセットで申し込む

もしあなたの手元に複数の売掛債権があるのなら、この方法が最も有効です。

信用力の低いA社の債権「だけ」を申し込むのではなく、誰もが知る大企業や、長年の取引実績があるB社の「優良債権」とセットにして、「A社とB社、まとめて買い取ってもらえませんか?」と交渉するのです。

これは、審査担当者から見ると「リスクの高い商品と、リスクの低い商品を一緒に買う」ことになります。
ファクタリング会社としては、全体で見たときのリスクが分散されるため、信用力の低いA社の債権も「セットなら買い取ってもいいか」と判断しやすくなるのです。

一点突破が難しいなら、合わせ技で総合点を上げにいく。
これは非常にクレバーな戦略です。

2. 裏ワザ2:攻めの早期資金化!「注文書ファクタリング」を検討する

「請求書」が発行される前の、「注文書(発注書)」の段階で資金化できるのが、注文書ファクタリングです。

特に、建設業やシステム開発業など、納品までに時間がかかり、先に材料費や人件費の支払いが発生する業種で有効な手段となります。

もちろん、まだ仕事が完了していない段階での買い取りになるため、ファクタリング会社にとっては「本当にこの仕事は完了するのか」というリスクが上乗せされます。
そのため審査は通常のファクタリングより厳しくなる傾向はありますが、売掛先の信用力「だけ」で判断されるわけではなくなります。

仕事の完了を証明できる契約書や仕様書などをきっちり揃えることで、売掛先の属性以外の部分で評価してもらえる可能性が生まれるのです。

3. 裏ワザ3:”自社の強み”で補強!熱意を伝える補足資料を提出する

特に、売掛先にファクタリングの利用を知られない「2社間ファクタリング」の場合、最終的に売掛金をファクタリング会社へ振り込むのは、申込者であるあなたの会社です。

つまり、ファクタリング会社は「この会社は、回収した売掛金を着服せずに、きちんと我々に支払ってくれるだろうか」という点も見ています。

そこで効いてくるのが、通常は提出を求められない「補足資料」です。

  • 今後の事業計画書
  • 他の優良な取引先との取引状況が分かる資料
  • 今回の資金調達で、事業がどう上向くのかを説明した資料

これらを自主的に提出することで、「私たちはこんなに真剣に事業に取り組んでいる」という熱意と誠実さをアピールできます。
審査はデータで行われますが、最終的な判断を下すのは人間です。
こうしたプラスアルファの行動が、担当者の心証を良くし、「この会社を応援したい」と思わせる一押しになることは、決して少なくありません。

4. 裏ワザ4:狙いは”柔軟性”!「独立系ファクタリング会社」に相談する

ファクタリング会社には、銀行やその子会社が運営する「銀行系」と、それ以外の「独立系」があります。

銀行系は、信用情報を重視した厳格な審査基準を持つ傾向があります。
一方で、私たちのような独立系のファクタリング会社は、会社ごとに独自の審査基準を設けているのが特徴です。

データ上の信用力だけでなく、経営者様との面談を通じて事業の将来性を評価したり、これまでの取引実績を細かくヒアリングしたりと、柔軟に対応してくれる会社が多く存在します。

一社に断られたからといって、すべてのファクタリング会社が同じ判断を下すわけではありません。
特に売掛先の信用力に不安がある場合、独立系のファクタリング会社こそが強力な味方になってくれる可能性があります。

5. 裏ワザ5:最終手段はコレ!「少額・短期の債権」に絞って申し込む

どうしても審査に通らない場合の最終手段として、この方法があります。

例えば、300万円の売掛債権ではなく、まずは50万円の売掛債権で申し込んでみる。
支払い期日が90日後ではなく、30日後の債権を選ぶ。

このように、ファクタリング会社にとってリスクが低い「少額」で「短期」の債権に絞って申し込むのです。
目的は、まずファクタリング会社との間に「一度、問題なく取引が完了した」という実績を作ること。

一度でも無事に取引ができれば、あなたはファクタリング会社にとって「信頼できる取引相手」になります。
そうすれば、次に少し大きな金額の債権を申し込む際の審査のハードルは、格段に低くなるはずです。

それでもダメなら…視点を変える資金調達の選択肢

あらゆる裏ワザを試しても、ファクタリングの利用が難しいケースも残念ながらあります。
しかし、そこで立ち止まる必要はありません。
視点を変えれば、別の道が開ける可能性があります。

選択肢1:融資の可能性を探る「売掛債権担保融資(ABL)」

ファクタリングと非常によく似た仕組みに、「売掛債権担保融資(Asset Based Lending)」があります。

比較項目ファクタリング売掛債権担保融資(ABL)
取引形態債権の「売買」債権を担保にした「融資(借入)」
審査の主軸売掛先の信用力売掛先の信用力+自社の返済能力
貸借対照表負債にならない負債(借入金)として計上される
資金化速度早い(最短即日)やや時間がかかる傾向

ABLは売掛債権を「担保」にお金を「借りる」方法です。
そのため、売掛先の信用力だけでなく、自社の事業計画や返済能力も総合的に評価されます。
もしあなたの会社に事業の将来性や強みがあるのなら、ファクタリングよりも有利な条件で資金調達できる可能性があります。

選択肢2:国や自治体の支援を頼る「公的融資制度」

日本政策金融公庫の融資制度や、各自治体が設けている制度融資など、中小企業を支えるための公的な仕組みも忘れてはなりません。

ファクタリングに比べて審査に時間はかかりますが、金利が低く、長期的な返済計画を立てやすいという大きなメリットがあります。
緊急性だけでなく、長期的な視点で経営を安定させたい場合には、非常に頼りになる選択肢です。

【重要】安易な利用は危険!知っておくべき2つのリスク

売掛先の信用力が低いという状況は、ファクタリングを利用する上でどうしても不利な条件となります。
その際に、必ず頭に入れておいてほしいリスクが2つあります。

リスク1:手数料が割高になる可能性

ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社が負う「貸し倒れリスク」の大きさに比例します。

つまり、売掛先の信用力が低いと判断されれば、それだけ回収不能リスクが高いと見なされ、手数料は相場よりも高く設定される傾向があります。

提示された手数料に納得できるか、その手数料を支払ってでも今資金調達をする必要があるのかを、冷静に判断することが重要です。

リスク2:悪徳業者の甘い罠

「審査なしで即日融資!」「どんな売掛先でも100%買い取ります!」

追い詰められている時ほど、こうした甘い言葉は魅力的に聞こえるかもしれません。
しかし、このような広告をうたう業者には絶対に注意してください。

法外な手数料を請求されたり、実質的には違法な高金利貸付(ヤミ金)であったりするケースが後を絶ちません。

信頼できるファクタ-リング会社を見極めるために、最低限以下の点は必ずチェックしてください。

  • 契約前に、手数料の内訳を明確に説明してくれるか
  • 会社の住所や固定電話番号が明記されているか
  • 契約書の内容が、法的に問題のないものか(不安なら専門家に相談する)
  • 複数の会社から見積もりを取り、手数料が相場から逸脱していないか

安易な選択が、会社をさらなる危機に陥れることになりかねません。
焦っている時こそ、慎重な判断を心がけてください。

まとめ:諦めるのはまだ早い。あなたの会社に合う「一手」が必ず見つかります

今回は、売掛先の信用力が低くてもファクタリングを諦めないための具体的な方法について、元審査担当者の視点から解説しました。

最後に、重要なポイントをもう一度確認しましょう。

  • ファクタリング審査の仕組みを正しく理解し、なぜ売掛先の信用力が重視されるのかを知ることが全ての始まりです。
  • 「優良債権とのセット申込」や「補足資料の提出」など、打てる裏ワザは一つではありません。自社の状況に合わせて試してみましょう。
  • ファクタリングだけに固執せず、「ABL」や「公的融資」といった他の選択肢も視野に入れることで、道は大きく開けます。
  • 手数料が割高になるリスクを理解し、「審査なし」をうたう悪徳業者には絶対に近づかないでください。

資金繰りの悩みは、経営者様にとって本当に孤独で、精神的にも辛い戦いだと思います。
私も審査担当者として、その苦しさを目の当たりにしてきました。

しかし、正しい知識は、暗闇を照らす強力な武器になります。
今回ご紹介した方法の中に、必ず今のあなたの状況を打開する「一手」が見つかるはずです。

まずは一社だけで判断せず、この記事で得た視点を持って、いくつかの信頼できるファクタリング会社に相談してみてください。
今日踏み出すその一歩が、会社の未来を大きく変えるきっかけになることを、心から願っています。